アニマルスパイツーリング【XSR900・トレーサー9GT・R7】東北編 vol.2

木造校舎の屋根に落ちた雨が雨樋を伝い、リズミカルに地面を叩く。たん、たん。そんな音を聴きながらヤブイヌはゆっくりと布団から這い出した。部屋を見回すと、散らかった机の上の空き缶が昨晩の宴の雰囲気を残している。低血圧のツチブタはまだ布団にくるまり静かに血圧の上昇を待っている様だ。ツチブタとはつくづく不便な生き物だと思いながら、歯を磨き出発の準備をしているとちょうど朝食が出来たようだ。食堂に向かう。

豪華な朝食。メダカの味噌汁はなさそう。

生卵には相変わらずカラザが入っている。コレは抜かなくてはならない。あまり知られていないがヤブイヌにとってカラザは致命傷に繋がる。間違えて食べてしまうと、他人の痰を食べさせられた気持ちになり、その後の食事は喉を通らないのだ。

このカラザは二つに分かれたタイプ。とりづらい。
部屋に帰ると、ツチブタが着ダルマになっていた。これなら宇宙にも行けそうだ。
本日は、冷たい雨。

外に出ると、昨夜の雨がベイビィたちを秋色に彩っていた。ナイスだ。秋のツーリングは雰囲気を最大限楽しめるかが分かれ目だが、雨もそんな重要なファクターのひとつとなりうる。紅葉と雨粒はバイクを二回りも色っぽく魅せる。

NICEだ。

ベイビィにまたがり、スロットルをひねると、ひと息でライダーの世界へと旅立てる。鳥が空を無尽に飛ぶように、3匹のベイビィは紅葉のワインディングロードへと旅立って行った。

お世話になった宿とのお別れ。
目次

ポジションのキツさと不思議な一体感。【YZF-R7】

山奥の交通量の少ない峠道は、雨をたたえて独特の世界観を形作っていた。路肩には濡れた落ち葉が降り積もり、美しくも危険な路面となっていた。YZF-R7はそんな路面をモノともせず、一つひとつコーナーをクリアしていく。三気筒の2台と比較すると、格段に柔らかく優しい。ソフトなサスペンションとフレームが、しっとりとした乗り心地を作り出し、滑りやすい路面でも恐怖を感じない。そこにパワフルな270度クランクのエンジンの加速感が心地よい。路面の状況に関係なく車体を前に蹴り出す。スロットルオンと同時にグッとくるトルクを、柔らかい車体が受け止めてワンクッション置いてから路面に伝える。そのしなやかさはまるで生き物の動きそのものではないか。優しさと力強さの絶妙なバランスは乗るものを深く魅了する。とにかく楽しいのだ。

リスキーな路面とR7。雨が降り続く。

一方で、ポジションはかなりスポーティで、ライダーに楽をさせない。ニーグリップをしっかりしないと両手のひらが疲れてしまうほど。今回はハンドルをカスタムしてタレ角をゼロにしているのでノーマルに比べて大分楽だが、最初馴染むまで時間がかかる。しばらく乗ると不思議な一体感が生まれて、ライディングが抜群に楽しくなるのも事実だが、出来ればもう少し楽な方が良い。

レンズが雨で滲む。

高速走行では、意外とウインドプロテクション効果が高い。見た目よりも雨に濡れずに、寒くもない。最新のカウリングの設計には脱帽だ。

山あいには、豊かな自然と田園風景が。
秋の山は、冷たい風を集めて赤く染まる。

しばらく走り、目的地へ到着する。今日は熱塩駅だ。駅は独特の雰囲気で当時の繁栄を我々に伝える。静かだが、雄弁なその姿は凛と構えていて美しい。

美しい建物。当時は革新的だったに違いない。
見た目が男前過ぎるR7。何とか楽にならんもんか。
ベイビィ達。コイツぁナイスだ。

詳しくはノスタルジックツーリングNo.19で公開するので、そちらを見て頂くとして、我々は帰路に着いた。帰りは途中の道の駅で、喜多方ラーメンを戴く。

ヨーカドーにあるポッポのラーメンと同じ味。
やはりバイクは見た目が大事だ。

いつの間にか辺りは暗くなり、我々は宿に向かう。そしてなぜか人気のない方へとひたすら向かっている。先頭のツチブタのナビは山奥を指しているらしい。

ほぼ闇。本当に宿があるのか?

なんとか無事に宿に着くと、宿では我々を暖かく迎え入れてくれた。暖かい風呂に入り、ご馳走をいただく。ハハッ、まるでツーリングじゃあないか。

山奥の宿でご馳走。夢を見ているのか?
ツヤツヤの刺身。

山奥の宿で出る刺身は、何故こんなに臭みがなく旨いのか?明らかに海沿いの料理屋よりも美味しい。移送というハンデまであるのに、理由がわからない。何かあるのか?

味が良いので、箸が進む。グビ。刺身の謎が、気になって仕方ない。

まあ旨いからいいか、グビグビ。酒が進む。

気がつくと、ツチブタが狂ったように米を貪っていた。四合位あった筈なのに。理由を問いただすと、とにかく米が美味すぎてやめられないらしい。横ではスナネコも米に取り憑かれていた。白米だ!白米だ!白米だ!連呼して白目を剥いている。

・・・明らかに何かおかしい。2人とも千と千尋の両親みたいになってしまった。2人が豚になってしまったら、私は彼らをたくさんの豚の山からキチンと見つけ出すことができるだろうか。しゃもじについた米を奪い合う2人を横目に見ながら、酒をあおる。グビ、クビ、グビ。

異常に旨い刺身の謎、取り憑かれる白米。よく分からないが眠くなってきた。いつの間にか泥のような重たい眠りについていた。

・・・何か話し声が聞こえる。人の声だ。ヒソヒソと話している。

「眠ったかえ?」

「おそらくな」

「ヒヒヒ、イヌマンはやはりよく効くわい」

イヌマン?何だそれは。

起き上がり、おもむろにドアを開ける。

ヤブイヌ「あのー、イヌマンって何ですか?」

話していた2人組は慌てた様子だ。

女将「お客様、イヌマンはご存じないですか。イヌマンとは、この地方に伝わる調味料ですよ。とても美味しいし、体にも良いんです」

なるほど。刺身の謎は思わぬ形で解けた。だから米や刺身が旨いのだ。

ヤブイヌ「ああ、そうなんですか。良かった。なんか変なもんかと思いましたよ。」

女将「そんなわけ無いじゃあありませんか。ゆっくりお休み下さいまし」

なんか色々とスッキリした。地場には地場の料理のノウハウがあるのだ。暖かい布団に入り、折角だからイヌマンを検索してみる。新しい知識は忘れる前に取り入れるタチなのだ。

イヌマン/ミミズが干からびたもの。雨上がりの道路で見られる。犬はイヌマンを見ると興奮して体を擦り付けて、時には食べてしまう。

慌てて飛び起きたら、窓からは朝日が差し込んでいた。不思議な夢を見たものだ。次回へ続く

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